そして、その日は来た。


「いつかその日が来る。」
そんな覚悟は、彼が磐田のスタメンから遠ざかり始めた
頃からし始めていた。
しかしそれは「いつか」であり、その時までの間には
曖昧な、不確定な、ほんわかとした、霧のような時間が
まだ横たわっているものと何となく思っていた。
札幌で出番が減り始めても、その時までの時間は、
何となく、まだ「ある程度」あるものだと思っていた。
しかし、霧の向こうの景色が急にクリアに見えるように
その時は突然にやってきた。
中山雅史、引退・・・なのだそうだ。
私がサッカー観戦の楽しさと出会って以来、
常に人生のお手本であり、あんな風に生きたいという
憧れでもあった。
彼が現役でがんばっているのであれば、
私も自分の持ち場でがんばろう、
そう思わせてくれる存在だった。
そういう意味では支えを一つ失った気分ではある。
しかし、だからといって私が足踏みするわけにはいかない。
彼が勇気を持って第二の人生を歩み始めるのであれば
私もがんばらねば、と思ってやっていきたい。