「時間旅行」の行き着く先


初めてDreams Come Trueを知ったのは、
TVドラマの主題歌だった「笑顔の行方」だったし、
初めてDreams Come Trueを好きになったのは、
90年の大晦日に彼女らが出場したNHK紅白歌合戦での
吉田美和のライブパフォーマンスのカッコよさからだった。
そしてその年明け、「スキーに持っていく歌」として
初めてこの「WONDER3」にふれることになった。
はじめは、それまでの「ニューミュージック」にはなかった、
洋楽っぽさやライブ感満載のアレンジにひかれて
単に音だけを拾いながらBGM的に聴き流していたのだが、
やがてその歌詞の深さと吉田美和の創り出すその「空気」に、
言葉の一つ一つを噛みしめながら聴くようになった。
このアルバムの12番目、トリを飾る曲が「時間旅行」。
当時から私がこのアルバムの中で一番好きだった曲だ。
ストリングスやホーンセクションを入れた厚みのある前奏から
始まるこの曲、音だけでも素敵なのに、その歌詞がいい。
情景が、心持ちが、目に浮かび、心に入ってくる。
そんな中に「2012年の金環食」を「指輪」になぞらえて
おねだりする、そんな一節がある。
アルバムが出た当時からすれば、22年後という
自分がどうなっているかの想像すらつかないぐらい遠い未来の
幻想的な天体ショーがさらっと歌い込まれていて、
聴いている自分も時を越えられるかのような
これまた幻想的な気分になったものだ。
しかし、その「時間を越えた永遠」の先にあった金環日食まで、
気がつけばもうあと10日あまり、ということになった。
単に天体ショーが楽しみ、というだけでなく、
初めてあの曲を聴いた時からの自分の時の重ね方や、
時間とは何、幸福とは何、とか、
いろいろなことを重ねて考えながら見る、
そんな日食になりそうだが、天気はどうなるのだろう・・・。